ネルソン・デミルのナイトフォール
2006-09-16


「プラム・アイランド」、さらに「王者のゲーム」で活躍した主人公が、今度は実際におきたTWA800の爆破・墜落事故を巡って大活躍。

翻訳が刊行されました!

1996 年夏の夜8:31、パリを目指して飛び立ったTWA800がニューヨーク、ロングアイランドの沖合の上空で爆発、分解、230人の乗客とともに海の藻屑となりました。その夏の夜、不倫中の男女が海岸で自分たちのお楽しみをビデオで撮影していたのです。たまたまレンズの方向で起きた事故がうつっていたようです。男女は、あわてて海岸を立ち去ります。無数の証人が、下から光が上空に向かって昇ってゆき、それから爆発が起きた、と証言していたのです。つまり、対空ミサイル攻撃によるものだと。ところが、公式報告はそれらの証言を全く無視するもので、からの中央燃料タンクの中で気化した燃料が、漏電した火花で引火、爆発となったというものでした。証人達が見た空に昇っていった光というのは、目の錯覚で、飛行機からこぼれた燃えている燃料だったというのです。それを説明するアニメビデオまで作られました。ミサイルによる撃墜というのは陰謀説だとして全く無視されるのです。

5年目の慰霊祭に、もと担当者の一人だった妻でFBIのケートが夫コーリーとともに参列し、公式見解にはどうもなっとくできないとコーリーに訴えます。そこで、いつもの大活躍が始まります。フィクションというよりも、ほとんどノンフィクションのよう。

ジョージ・オーウェルのSF的作品「1984年」中の逆説的表現である「愛情省」という用語や、「オーウェル的」という表現が何度か使われています。あの国の社会状況を端的にあらわすキーワードなのかも知れません。後は読んでからのお楽しみ...。

デミルが「ダビンチ・コード」に推薦文を書いたお返しに、「ダビンチ・コード」の著者が推薦の言葉を書いています。読み始めたら止まらず、読み終えてからも、考えさせられてしまうようです。ミステリー大作というレッテルだけでは言い表せない何かを感じます。社会派ミステリー?なおTWA800事故については様々なwebページが作られていますから、検索して読んでいただくと、一層興味が増すかも知れません。

(2004.12.5記 )

翻訳が出ました。
白石朗訳 講談社文庫 上・下 各1000円

(2006.9.16記)
オンライン書店ビーケーワンで購入
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